Aさん:前回からの宿題があったよね。最初に「人をおんぶしてもビクともしないアドレスのつくり方」から教えてよ。
Mさん:先ずAさん、立ち姿勢で右手腕にクラブを持ち、右脚一本で立ち、頚椎の下に右股関節が入っていることを確認しながら、右尻を後ろへ突き出すように45度前傾すると右肩前にクラブヘッドが下りて来て着地する。続いて左足踵の延長線上にあるボールの後ろに右手腕でクラブフェイスをセットさせながら左足、右足と開脚し、左手、右手とグリップすると、背骨が右側に傾斜するアドレスがつくられる。ここでは両膝から下は垂直であることと両膝から下の足をバタバタと足踏みしおまじないするんだ。Bさん、このアドレスをつくったAさんの後ろから背中に深くおんぶして暴れて見て下さい。アドレスは建物の土台のように堅固につくられているんだ。申し遅れましたが私はマイク小西先生のB・G・Gクラブの会員であります。
Aさん:重さも何にも感じないよ。魔法にでもかかったような気分だ。どうしてこうなるんだろう。Bさんはゾンビのように軽くなったね。
Bさん:では続いて「脚腰の原動力でボールを打つ方法」を伝授して下さい。いくらMさんでも、これは無理じゃないの!まさかボールを脚(足)で蹴飛ばすんじゃないだろうね。そんなことが出来たら、俺はデングリ返って見せるよ。
Mさん:ご心配無用ですよ。Aさんがつくったアドレスから左膝を左前への踏み込みより、両脚腰が両股関節を動かし、両股関節が躯体を動かし、躯体に付いている両手腕がボールをヒットするんだ。野球の投手と打者をイメージすれば理解し易いと思うよ。だって、投手は手腕のみでボールを投げているんじゃないし、打者は手腕のみでバットを振っているんでもないでしょ。テイクバックは左膝を左前に踏み込み、その力で両手腕とクラブシャフトが右横上へ動き勝手にトップ位置がつくられる。フォワードスイングは右脚腰を踏み込み右脚腰が下がり、両手腕はトップ位置から右肘をポケット位置に入れながら、両脚を左へ移行しながらインパクトゾーンに向かうのだ。この打法は3~4歳の子供が欲しい物を買ってもらえず駄々をこねている姿に良く似ている(イヤダ、イヤダとね)。どうだ。出来ただろう。デングリ返って見せろよ。
A、Bさん:ゴルフが下手ピーなMさんもたまにはまともな事を言うね。俺達も同感だよ。俺はデングリ返しで頭を打ってしまった。これで頭の回転がもっと良くなるかなぁ。

〔1〕米大リーグ エンジェルスの大谷翔平選手は投打の二刀流でMVPを受賞されました。日本人の俺達も大変な誇りである。
先日、ある大手メディアが主催するテレビ番組で大谷翔平選手の強みはどこにあるかの討論会が行われた。
〔2〕そのゲストメンバーは駒田徳広(元内野手)、五十嵐亮太(元投手)、山内優大(データースタジアム)〔敬称略〕に加えて司会者2名である。
先ずホームランの確率が高いと言われるバレルゾーンについて、駒田徳広がスタジオでバットを持って、スローでボールがバットに当たる瞬間を実技で示し、バレルゾーンの説明があった。

大谷選手の強みとしてゲストメンバーのご意見は、概ね                        〇脚腰が強いから。
〇野球人口が増えたから。
〇下半身で打っているから。
〇打とうと言う気持ちが強いから。
〇チェンジアップボールに強いから。
〇場所がカルフォルニアの西海岸であるから。
〇ボールの伸び易い方向へ打つから。
〇肩にトミージョンの手術を受けたから。
〇打つ顔つきが本気だから。
〇体幹が強いから。
〇打順が良いから。
〇スイング力が高いから。
〇左投手に強いから。
〇腕力が強いから。

             以上の通りであり、〇14が出された。

〔3〕Aさん:ある辞書によるとバレルゾーンとは打球の速度と角度を組み合わせ、長打になる範囲を言うようだが、日本人は横文字に弱いから、上手く騙されたような気もするなぁ。いずれにしても打撃の確率論と結果論だと思う。Bさん:俺もそう思うよ。しかも俺はいつ打ってもバレルゾーンで打っているよ。ただあまり遠くへ飛ばないだけだよ。
 Mさん:それって、ゴルフの話じゃないか。
 Bさん:バレタか。実はバレタゾーンで打ってました。
 Aさん:俺も〇14は、すべてが大谷選手の強みだと思う。凄いな。羨ましいなぁ。大谷選手の強みがもっとたくさんある中で、もう一つ加えるとしたら、とてつもない練習量だと思うよ。
 Mさん:Aさん、成長したね。しかし、大谷選手の強みご意見の中で「脚腰が強いから」「下半身で打っているから」「チェンジアップボールに強いから」の3強みは次世代への打法のトレンドを示していると思うよ。22年度春から始まる大谷打法は野球界やゴルフ界に大きな変化を呼ぶと思うよ。
 A、Bさん:恐れ多くも、そんなふてぶてしいこと言って大丈夫かなぁ。野球の神様のような駒田選手や五十嵐選手は何も言ってないじゃないか。そして大谷選手達は野球の打者であってゴルファーじゃないんだから。
 Mさん:そんなことは分かっているよ。野球打者とゴルファーの違いは、ボールが止まっているか否かと、前傾角度が違うだけなんだ。野球打者の前傾角度は概して10~15度であり、ゴルファーの前傾角度は概して40~50度である。だってゴルフボールは地べたにあるんだもん。大半の現または元野球選手はゴルフ競技をしてもほとんどが達人だよね。スイング角度のU字形が深いか浅いかだけだ。グリップしてバットをほぼ水平に振れるか、クラブシャフトをクラブのライ角に沿って斜め下に振れるかだよ。スイング軌道はいずれもインサイドアウトであるけどね。
 Aさん:次第にMさんの理論に飲み込まれそうだ。なんだか洗脳されそうだ。クワバラ、クワバラである。
 Bさん:俺もクワバラ、クワバラだ。Mさんは一体、何が言いたいんだろう。
 Mさん:一般的にゴルフボールを遠くへ飛ばすには力学を使ったテコ作用と遠心力の発生させることだよね。しかも両脚腰が股関節とその上の躯体についている両手腕を動かし、ボールをヒットさせるんだ。大谷選手のバッターボックスでのスイングを良ーく見ていてご覧。ほんの僅か(何万分の1秒かそれ以上)脚腰(下半身)が先に動くんだ。それによって上半身が動き出す。つまり、(脚腰を動かす原動力でボールを打つので)上半身では打っていない証がここにあるんだ。
 Aさん:Mさんは恐ろしいほど良く見ているね。目薬が欲しいんでしょ。良ければあげるよ。
 Bさん:Mさんはそんなに理論に精通しているのに、なぜ野球スイングに酷似するゴルフはそんなに下手ピーなんだろう。
 Mさん:もう一つ絶対に動かしていない部分があるんだ。それは両手腕なんだ。動いて見えるのは脚腰により動かされる躯体なんだ。今度良く目を凝らして見てご覧、また目薬が要るかなぁ。もし仮に躯体が動き、両手腕を動かしたらバッティングにならないんだ。左膝のほんの僅かな踏み込みで両手腕に持つバットは躯体ごとトップ位置まで持っていかれ、スイングのスタートは右脚腰を踏み込み右脚腰が少し下がり、両手腕に持つバットは躯体ごと(投手の投げた)ボールに向かうのだ。
 A、Bさん:それじゃゴルフスイングと同じ見たいじゃないか。
 Mさん:そうだよ。違うのはボールが動いているか否かと、前傾角度が深いか浅いかだと言っているじゃないか。
 A、Bさん:相手方投手の投げたボールとバットの出合い方に大谷選手の(バットの)強みのヒントがあるようだね。
 Mさん:そうです。その通りだよ。大谷選手が両手に持つバットは躯体ごと(相手方投手の投げた)ボールに向かい、ただそのままボールに出合うと、ファールか凡打にしかならないだろう。このボールとバットの出合いのあり方が大谷選手の最大の強みを生み出しているんだ。大谷選手はボールとバットが出合う一瞬にテコ作用を働かせ遠心力を発生させているんだ。多分、大谷選手は気付いていないと思うが、ここで打てばホームランが出ることを熟知しているんだろう。さて、それではテコ作用が働く部所はどこかと言えば、バットが脚腰によって動かされ、(力学から見て)脚腰によって動かされるバットが水平から垂直に変わるほんの一瞬とされているんだ。だから、この一瞬の間にボールとバットが出合うとホームランか巨大ファールになるんだ。
 Aさん:でも大谷選手のバッティングフォームを見ていると、バットはほぼ水平からやや斜め上へ振られているだけにしか見えないよ。老眼鏡と目薬を用意して、もっと目を凝らそうか。
 Bさん:どう見てもバットが垂直に変わる部分なんて全くないよ。
 Mさん:私達がバッティングスイングをすると、スイング中に左右両肘は確実に入れ替わりグリップも入れ替わるよね。肘とグリップが入れ替わる瞬間は必ずバットが垂直になっている瞬間なんだ。ただ早過ぎて見えていないだけなんだ。但し、手腕で振ったら、水平から垂直への動きは不可能だ。あくまでも、脚腰が動いて、躯体に付いている両手腕が振られる動きが必要不可欠なんだ。そして、大谷選手はチェンジアップボールに強いのは、そのボールが下方へ動き水平から垂直に変わる動きを補っているからだ。米メジャーリーグの投手達は、ストーブリーグ中に大谷選手にはストライクを狙うチェンジアップは絶対に投げてはならないことに気付くでしょう。
 A、Bさん:Mさんは顔に似合わず鬼の目だなぁ。言い方、変かなぁ。
 Mさん:そう無理っぽい誉め方をしなくても良いんだ。Aさん、Bさん、もう少し俺の考え方を反芻しながら理解してほしいね。

〔4〕大谷選手の投法について球辞苑(NHK制作チームによる究極の野球辞典をつくる編集会議)ではどのように取り扱われるのでしょうか。興味津々です。ゴルフ界では大谷選手流の打法でゴルフ競技をする選手は全く居なかった訳ではないのです。米国メジャーゴルフの〇〇選手は脚腰で打ち、テコ作用を働かせ遠心力を発生させて飛ばし好成績を収めています。しかしながら、この打法はまだまだ少数派なんです。大谷選手は、このような少数派の打者またはゴルファーに夢と希望を与えてくれました。私たちの体で最も頑丈でタフな脚腰を使って思い切り飛ばし、野球をそしてゴルフを思う存分に楽しもうではありませんか。