当事務所は時折、ゴルフ好きが集まるとボールが飛ぶ飛ばないで花が咲く。こんな時は時間が駆け足で過ぎていく。全員が満面の笑顔だ。俺は150ヤードの平坦なショートコースで風もないのに7番アイアンで手前の池ポチャだったと悔しがるAさん。同じコースで同じ番手でボールが低く出てグリーンオーバーしたとやや誇らしげのBさん。もちろんAさんは黙っていない。顔を赤らめて声高らかにそう言うのをミスショットと言うんだよBさん。どうやらゴルフは失敗したときの方が楽しそうだ。失敗のスポーツがゴルフだと言われるが本当みたいだ。
そこでゴルフは下手だが練習所の教え魔みたいなMさんが口を出す。ところでゴルフはアドレスに始まり、アドレスに終わると言われているがAさん、Bさんどう思う。
Aさん:ヘェー アドレスって、そこまで歩いて行ってボールを見て前のめりして構え、それで打っていけばいいんじゃない。
Bさん:俺もそう思うよ。あまり気にしたことないね。でもゴルフはアドレスがすべてだとどこかで聞いたことがあるよ。ピンと来ないがね。
Mさん:アドレスとは現住所のことだよ。アドレスを疎かにするとそこへ帰ってこれなくなるんじゃない。住所不定と言うこともあるしね。
Aさん:だから女房に怒られ追い出されそうになったんだ。分かる。分かる。
Bさん:Aさん、他の理由で家を追い出されそうになったんじゃないですか。
Aさん:・・・・・。
Mさん:アドレスを飛球線方向、または後方から見るとボールにセットされたクラブシャフトと背骨は直角が正しいと言われているんだよ。シャフトと背骨が90度を欠くと(立ち姿勢が強まると)、打たれたボールはフックするし、90度を増すと(前傾が深まり過ぎると)、打たれたボールはスライスする。テレビでプロ達のスターティングDVを見ているとほぼ100%が同一結果となっているよ。今度、見てご覧よ。それに、なよなよしたへなちょこアドレスは駄目だね。人間一人をおんぶしてもビクともしないアドレスが必要なんだ。
Aさん:俺もそう思う。プロ達はゴルフコースに合わせてインセンティブスイングをしているように見える。俺が打てば何時でもチョロだ。
Bさん:だからプロなんだよね。俺は上がり性だからみんなが見ていると思うとスタートコースはいつもボールが後ろへ飛ぶんだ。仲間には危ないから後ろに立つなと言ってあるんだ。俺は何時もここへ来ると、つい芸術的ショットになっちゃうんだあ。
Mさん:アドレスを背中から見ると、左肩が高く、右肩が低く、背骨が右に傾斜しているんだ。だって、人間の背中は逆三角形(両肩幅2:両腰幅1の関係)だから、そのままボールを打つと、スイング軌道はアウトサイドインにしかならないんだ。
Aさん:よく考えたね。でもMさんにゴルフやらせると下手っピーなのに良く、こんなことに気付いたもんだ。
Bさん:何か本当らしく見えるが大丈夫かなぁ。もともと逆三角形の背中を正三角形に見せているところがミソだなぁ。正三角形の背中でスイングできれば、スイング軌道はインサイドアウトになり、ボールの飛距離は増すし、スライスもフックも全く関係ないし、即刻、プロショットが可能になるんじゃない。
Mさん:アドレスを前から見ると、背中を正三角形に見せているので左肩が高く、右肩が低く、その高い左肩から左手腕が垂直に下がりクラブシャフトが握られボールの後ろにセットされているんだ。そして、右手を左手グリップの下へ持っていきクラブを握るだけで良いんだ。
Aさん:なるほど、背中と体の前面が一緒に働いて、堅固な正三角形のアドレスが出来るんだ。しかも、背中からの三角形だから両手腕の単独行動も出来ないしね。このアドレスだとボールが高く、しかも遠くへ飛びそうな気がするね。
Bさん:クラブシャフトと背骨が直角のアドレスから左肩を高くするだけで、背中と体の前側を正三角形に見せるセットアップが出来上がった。意外と楽だった。何か真剣味が出て来た。この先、早く教えてよ。
Mさん:Bさんのアドレスによるセットアップから、テイクバックしてトップポジションをつくる。テイクバックは左膝を少し下げながら、右手腕でリストコックをつくりながらトップPが完成する。しかしながら、このテイクバックでは背骨が動き、背骨の天辺である頭が動き、フォワードスイングでクラブヘッドがボールに当たらないか、ミスショットになる。つまり、手腕そのものを直接使用してテイクバックし、フォワードSすると、背骨や頭が動いてしまう。ボールは真っ直ぐ遠くへ飛ばすには、脚腰が股関節を動かし、股関節が上体を動かし、上体に付いている手腕がボールをヒットする必要がある。だって野球もテニスも脚腰の原動力で打っているじゃない。なんでゴルフだけ手腕の原動力で打つのだろう。USAメジャーの大谷選手は脚腰でボールを打ってホームランを量産しているんじやない。テコも働かせてね。
A、Bさん:ゴルフのテイクバックとフォワードスイングとも(原動力は)脚腰で動かすんだ。今まで手腕を振ってボールを飛ばすものと思っていたが間違いなんだ。手腕でクラブシャフトを振ると背骨やその天辺にある頭を動かしてしまうんだ。でも良く考えて見ると、脚腰が躯体、頭、手腕を何時も支えているので、脚腰は体の最も強靭部分だよね。これを使わない手はないよね。だから俺達は手腕で力一杯振ってもボールに当たらないし、飛ばないんだ。Mさん、ボールを「脚腰の原動力で打つ方法」と「人をおんぶしてもビクともしないアドレスのつくり方」を教えて下さい。でも、Mさんで大丈夫かな。
Mさん:私でよければ教えますよ。でも、次回にしましょう。